ライフワークと仕事の葛藤を越えて
昨年、9年間いたM高校から同じチャレンジスクールの老舗K高校に転勤になった。定年まであと2年を残しての予想外の異動である。そのストレスもあり、2年勤めたら再任用などせず、「カットイメージ読解法」の普及活動に本腰を入れて取り組もうと、昨年度はそればかり考えて暮らしていた。
もちろん、教師も自分のやりがいではあるが、仕事はただでさえ平日の大半の時間を占めているうえに、仕事の質にこだわる私は、ついつい残業が多くなる。
本当は家族との時間も大切にしたいが、平日は帰りが遅く、週末はライフワークのために時間を割きたいので、ついつい家族と過ごすことは後回しになってしまう。
ささやかながら、公開講座や自主講座を開講し、ホームページも立ち上げて、少しずつカットイメージについての情報発信を進めてきた。しかし、念願の出版は、20年前から考えているが、手つかずのまま、今日まで来てしまった。
今年度になり、いよいよ定年まで1年を切った。しかし、ライフワークがすぐ収入につながる目途も立たず、家族のいろいろな事情を考えると、やはり2、3年は再任用で勤めざるを得ないと考えるようになった。これでは、なかなか悪循環を脱することができない。そんな焦りを抱えて日々過ごしていた。
そんなおり、Art of Coachingのミニワークショップに参加してきた。AOCは、「本質的な人間理解」に基づき、知識や方法だけでなく、コーチ自身の「あり方」を学ぶことを目指すコーチングスクール。NLP関連の著名人の中でも私がもっとも信頼し尊敬する山崎啓支氏が主宰する。
今回参加したのは、AOC認定コーチのKさん(女性)が講師を務める、「『いつかできたらいいな・・・』を行動に移す ~壁を乗り越え、一歩踏み出す~」と題した2時間半のワークショップ。
一般の参加者5名に、AOCのスタッフ、コーチも同数参加している。まず自己紹介として自分の活動内容や願望などを話す。私がカットイメージのことを話すと、講師をはじめ、たいへん関心を示していただいた。
最初のワークでは、3人グループで自分がやりたいことと、それを阻む壁について話し合う。
そのあと、AOCコーチングの基本的考え方についてのレクチャー。自分の気持ちや行動が思い通りにならないというとき、意識と潜在意識の戦いという単純な図式ではなく、自分の中にある「プログラム」が反応していると考える。プログラムは、幼いときに潜在意識が作り出したものだが、状況が変わっても私たちの行動を強く規定し続けている。プログラムから自由になったとき、潜在意識の持つ無限の可能性も開花すると。
休憩をはさんで、最後に自分の葛藤に向き合うワーク。
二つ折りにした紙の右と左に、願望に挑戦した場合のメリット、デメリットを書き出す。次にペアになって、交互にクライアントになって自分の葛藤を説明し、傾聴してもらう。
そのあとが、タイムライン(時間軸)のワーク。2つのリストを切り離し、床の左右において真ん中に立ち、目の前に未来に向かうタイムラインをイメージする。会場が狭く、他のメンバーと動線がクロスするので、半歩(靴の半分)ずつ。半歩を1年として、5年先までゆっくりと進む。その葛藤を抱えたまま、日々を送り、成長・変化していく自分を味わいながら。そして、5年後の自分の成長を実感し、5年前の「今」の葛藤をふり返る――。
じっくりと進んで、ふり返ってみたら、葛藤に振り回されて不全感を持っている自分の姿が外から見える感じがした。そうして時間を無駄にするより、一日一日、一瞬一瞬を大切に生きていきたいと心から思えた。
それから数日たって、ふと気づくと、不思議なことに校務のTo-Doリストがサクサク片付いている。
週末には、妻と一緒に映画のDVDを見たり、家族との時間を積極的にとることができた。一方で、家族の了解のもと気持ちよく机に向かう時間が取れたので、本の原稿を少しずつ書き始めた。
何か吹っ切れたみたいで、今やっていることに集中できる。逆に言えば、自分の中の焦りがムダに葛藤を作り出していたのかと気づいて、自分自身でも驚きだった。焦りから解放されると、私の潜在意識が伸び伸びとその力を発揮し始めた。
約2週間後に、同じシリーズのワークショップに参加して、講師のKさんやスタッフの皆さんにお会いできたので、さっそく成果を報告し、感謝を伝えた。