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執筆者の写真教育エジソン

M高校の学力観と学力向上戦略

更新日:2020年9月27日


 平成23年度から、都立高校では、「学力向上」のために各校で工夫をし、その取組みをまとめて報告する義務が課された。それに先立って、昨年度、本校はその先進実施校の指定を受けた。校長がそれを職員会議に報告したとき、賛否両論あったが、委員長に指名された理科の教員は、「今まで先生方がそれぞれの授業で工夫してきたことを生かしたい」と語った。私も彼の右腕として、「先生方の実践を意味づけ、さらに協力して取り組んでいくための方向性が見出せるとよい」と発言した。

 そのとき、ある美術の教員がこう言った。「学力というと、国数英などの座学に偏りがちだが、M高校で育てる学力としては、実技科目も含めて広く通用する学力観を打ち出してほしい」と。それを聞いてなるほどと思い、それが私の宿題になった。

 M高校の先生たちの取組みを活かす。しかも、座学だけでなく、全教科の教員が本校の生徒のために日々努力していることの意味を見つけ、さらなる取組みの指針となるもの。そう考え続けたある日、私の心にふと、次のような考えが浮かんだ。

 M高校の生徒たちは、不登校や学力不振の経験で、学習一般に対して「やってもできない」という心の構えを持っている。これは、体育など、苦手とする実技教科においても同様であろう。それに対して、先生たちは、それぞれの授業で、工夫を凝らして生徒たちを学習に参加させ、「やったらできた」という気持ちを味わわせ、それを積み重ねて、さらなる目標へと取り組ませ、自ら学ぶ意欲へとつなげていく。

 そのことは、すべての教科に通じ、先生方の実践を意味づけ、さらなる取組みに向けて努力、工夫の方向性を指し示してくれる説明ではないか。この考え方を、学力の定義を含めて、次のように整理してみた。

 学力とは何か、という問いに対しては、学校教育法第30条に、学力の3つの側面としてまとめられている。それは、①基礎的知識・技能、②思考力・判断力・表現力等の応用力、③進んで学習する態度である。

 これらの関係は通常、①基礎的知識・技能をつけてから、②の応用力をつけていく、それらの両方において、③学習意欲が必要だと捉えられている。しかし、ほんとうにそうか。

 基礎力がつくまで思考力や表現力が発揮できないわけではない。考え、表現する中から、基礎的学習の必要性に目覚める、ということもある。だから、これらは双方向であるはずだ。

 また、学習意欲も、別のところから来て学習を支えるというより、学習自体がやったらおもしろい、やったらできたと感じることが、学習意欲につながることが多いし、本来の姿なのではないか。

 そう考えて、図のような学力観をまとめ、先生方の議論の俎上に乗せた。すると、大方の共感をいただいた。

 この学力観から出てくる、M高校の先生方の努力の方向性は、「やったらできた」という小さな達成感を積み重ね、「やればできる」という自己効力感を育てていこう――となる。これを、「M高校の学力向上戦略」と名づけた。

 この考え方をみんなで共有し、各教科の取組みを促し、それをまとめていくのが、私の役割である。

2011年12月

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