リラックス法の授業その後 癒しの声とひと仕事
前回報告した通り、本校の独自科目コーピング・リレーションタイムで、昨年度、呼吸法・弛緩法・イメージ法というリラックス法の授業を実施した。アンケートなどから伺える生徒の評判は悪くないが、慣れない誘導シナリオの朗読は、先生方の負担感が大きかった。そこで今年は、その部分を吹き込んだCDを自主制作することにした。
しかし、誰が吹き込むか。当初は、早大の学生に依頼することを考え、人選を頼んでいた。作業を進めるなら夏休みがよかろうと考えているうちに、7月になってしまった。
そんなおり、同僚にこのCD制作計画を話すと、それなら、Y先生が「癒し系」の声だから適任だと言う。Y先生とは、週に一度だけ来る本校のスクールカウンセラーで、私と同年輩だが、確かにその声は、高く澄んでいながら、穏やかで安心感を与えてくれる。
遠慮がちに話を持ちかけてみると、カウンセラーとしても、そうした話し方の技術をぜひ磨きたいと言う。双方の利が一致して、話はとんとん拍子に現実となった。
幸い数万円の研究助成金が使えることになったので、沿線の録音スタジオを予約し、準備を進めた。Y先生にも謝礼が出せる。
夏休み中に臨時出勤してもらい、シナリオの読みあわせだけでなく、発音発声の練習も行なった。すると、滑舌練習のテキストを持ち帰り、自宅で毎日やると言う。
10月の期間休業日に、録音日程を組んだ。その日は朝から学校で発音発声練習とリハーサル。そして、午後からスタジオに行き、夕方まで録音に詰める。アマチュアバンドなどが使える小規模なスタジオだが、技術スタッフがずっとついて、今録音したものをすぐ聞かせてくれ、部分的な録音し直しにも応じてくれる。私はプロデューサーとして横で注意深く耳を傾け、スピードやタイミングの指示をしていく。全部で13個のコンテンツを録音し、貸切時間の4時間ぴったりで、録音は終了した。集中して仕事を成し遂げ、Y先生も満足そうな笑顔を見せて帰っていった。
イメージ法の一部にだけ音楽を入れ、数日後には、CDが完成した。聴いてみると、ほとんど素人くささを感じない。
Y先生の前向きな姿勢は、本当にありがたかった。私がさまざまな注文をつけても、的確に意図を理解し、応えてくれる。共にいいものを作ろうという気持ちで一致して、仕事が進んだ。若い学生では、こうはいかなかったかもしれない。お互いの役割を果たし、協力してひと仕事する、という充実感が味わえた。すばらしいチームパートナーだった。
できあがったCDは、担任貸出用に十数枚複製し、年末の教員研修会で公開した。先生方の評判はよかった。年明けには、これを使って実際に授業をすることになる。その結果は、また報告することとしたい。
2009年12月