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執筆者の写真教育エジソン

学校設定科目コーピング

更新日:2020年9月27日


 M高校には、人間関係スキルを学ぶリレーションタイムと、学習スキルを学ぶメソッドタイム、二つのコーピング(対処法)という科目があり、だからこそ、私は、この学校への異動を希望したのである。

 コーピング・リレーションタイムは、早大人間科学学術院臨床心理研究室の協力が得られ、教授の指導の下、開設準備の先生方と大学院生たちが共同でプログラムを開発した。

 認知行動療法の枠組みで、認知、行動、情動の単元を立て、対人関係ストレスにどう対処(コーピング)するかを考えていく。情動の単元には、ストレスマネジメントとして、漸進的弛緩法と自律訓練法も盛り込まれている。

 しかし、用意されたワークシートと指導案を見ると、あくまでも素案であり、そのまま実施できるものとは思えなかった。さいわい、希望通りコーピングの担当となったので、実施に向けた改訂の作業に取りかかった。

 授業にもスタディアシスタントとして来てくれる早大の大学院生とメールでやり取りし、改訂版ワークシートを毎週の授業に間に合わせる。自転車操業状態だが、院生が有能なので、忌憚なくアイデアを出し合って、ワークシートの完成度は、どんどん上がっていく。

 授業する担任に内容を理解してもらうための校内研修会も、私が運営し好評を得た。

 一方、学習スキルを学ぶとしたメソッドタイムは、私の専門分野でありながら、なかなか手をつけることができなかった。

 開設準備室では、当初予定していた学習の専門家との連携が頓挫してしまい、国数英の教員が苦心して教材をひねり出すこととなった。しかし、できたものは、ひらがな、カタカナ、アルファベットの書き方、加減乗除の筆算のしかた、という小学生レベルの復習かと目を疑うものだった。掲げた志は高かったが、教科の発想を越えることができなかったのだ。

 このままでは、メソッドタイムは「画に描いた餅」に終わる、と危機感を抱きながらも、リレーション教材の改良に手一杯で、なかなか取り掛かることができなかった。また、せっかく教材を作ってくれた先生方の立場もある。小学生レベルの算数に退屈する生徒と頭を抱える生徒がいる教室の中で、もどかしい思いで日は過ぎて行った。

 それでも少しずつ「新メソッドタイム」の構想を練り、7月には企画書をまとめて職員会議の提案に漕ぎつけた。夏休みいっぱいかけて、後期分のワークシートを仕上げた。

 学習の動機づけから、授業の受け方スキル、記憶学習の方法、理解のセルフモニタリング……。学習心理学や諸科学に基づいて、学習のやり方をトレーニングし、考えさせ、自ら工夫して学ぶ、自立した学習者を育てていく。

 私の修論主査であった東京学芸大のK教授に監修をお願いしつつ進めているが、完成までの道のりは、まだまだ遠い。

2007年10月

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