top of page
執筆者の写真教育エジソン

暗記ペンの裏技②


 暗記ペンの使い方は、本文を問題と答えに分けて読み、問題とそのヒントを残し、答えとなる部分を塗るのが基本的な塗り方である。

 しかし、裏技と言うのは、この先である

 適切なスモールステップを作っていけば、学習はスムーズに進む。暗記ペンをうまく使うと、そのステップをいくらでも細分化できる。

 たとえば、「二葉亭四迷」が初めて見る名前なら、一気に塗らず、「■葉亭■迷」でもよい。これなら、いきなり覚えるよりずっと楽である。それでいて、何も塗らないより、はるかに手応えがある。言えるようになったら、全体を消してもいいし、「■■亭■■」としてもよい。もっとオーソドックスに苗字だけ残して名前を消す(または逆)なども、もちろんかまわない。いずれにしても、1文字ずつでも部分的に消し、それが言えるようになってから全全体を消してもいいし、「二葉亭四迷」としてもよい。もっとオーソドックスに苗字だけ残して名前を消す(または逆)なども、もちろんかまわない。いずれにしても、一文字ずつでも部分的に消し、それが言えるようになってから全体を消せば、ずっと楽に、能率的に覚えられる。

 こうした学習の進め方をすると、自然とその文章をくり返し読むことになる。教科書や参考書の解説は、ふつう無味乾燥で、ただ漫然と読んでいても、集中できないし、記憶に残らない。しまいには眠くなる。しかし、暗記ペンでマークしたところを答えながら読み、それを段階的に進めていくと、何度読んでも飽きが来ない。頭を働かせて問題を作り、自ら答えていく形式なので、学習の姿勢が能動的になり、脳が活性化されてくるのだろう。

 また、暗記ペンが単語カードなどよりいいのは、常に文脈の中で覚える点である。記憶は一対一対応ではなく、多角的な全体理解の中に位置づけられてこそ、使える知識になる。その意味では、文章の中で覚えるに越したことはない。だから、学習を進めるときには、マークしたところだけを言えればいいのではなく、全体をくり返し読むことが大切である。

 漢字にふりがながある場合には、まずふりがなだけを消し、読み方を覚える。あるいは、ふりがなを残して漢字の方を消す手もある。字をイメージしながら(あるいは実際に書きながら)覚えれば、その字面が記憶に残るようになる。また、「樋口一葉『たけくらべ』」を「樋口■■『た■■■■』」とマークすれば、同時に覚えることができる。最後には、前後の文章をヒントに、「■■■■は『■■■■■』を書き……」でも言えるようになる。これなら、作者名と作品名とどちらを先にマークするか、と悩むこともない。同時記憶の裏技である。こうして、楽しみながら本文中の重要事項を覚えたら、前に書いたように、基本問題に取り組む。すると、不思議なくらいすらすらと解ける。それが極めて快感である。その快感を毎回味わえれば、学習への意欲がわく。そのために、章や節ごとに暗記ペンの学習と基本問題をセットにして学習計画を組む。既存の参考書や問題集より、ずっと効率的な学習プログラムが自作できるのである。

 こうした秘伝を、三年生の選択科目の時間に生徒に話した。実際にやってみて、「今まで自分はなんて効率の悪い覚え方をしていたんだろうと思いました!」と報告してくれた生徒がいた。授業直後に、少し考え込んだ顔をして、「自分なりにいろいろ工夫してみます」と言いに来た生徒もいた。話だけで完全には腑に落ちないが、刺激を受けたのだろう。私のやり方を一つのヒントとして、そういう姿勢で臨んでくれるのが一番うれしい。

2003.7.

閲覧数:1回0件のコメント
bottom of page