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執筆者の写真教育エジソン

学童保育のキャンプ① 父母たちの負担は?


 我が家はひとり親家庭なので、小学2年生の息子は学童保育に通っている。

 地域の学童保育は、学校ごとに隣接して設けられている。自治体の援助は受けているが、運営は父母の自治的な組織が担う。入ってみてわかったが、公設されている保育園とは違い、学童保育は親たちの積極的な意志に支えられて初めて成り立つものである。毎月父母会があり、60世帯ほどの親たちのうち、平均して半数以上が出席して、2時間以上、指導員(保育を担当する職員)から子どもたちの様子を聞いたり、学童保育クラブの運営について、話し合ったりする。

 2、3ヶ月ごとに行われるさまざまな行事も、父母たちが協力して作り上げる。対外的な宣伝と財源確保を目的としたお祭りやバザー、ともに子育てを楽しむためのキャンプや交流会など、担当の運営委員が企画から実施まで、みんなをリードしていく。

 そうした行事は、子供も喜ぶし、父母たちにとっても、力を合わせてやり遂げていく楽しい経験なのである。次第に顔見知りも増え、互いに親近感を持つ。私も一年間、学童保育に関わってみて、地域のつながりの温かさを、次第に実感するようになった。

 とはいえ、みな仕事を持ち、多忙だからこそ子供を預けているわけで、なるべく負担の少ない行事を担当したがるのは、人情である。役員を決め、行事分担を決める年度末の父母会では、特定の行事に希望が殺到し、じゃんけんやくじ引きに熱が入った。

 私は、昨年と同じキャンプ担当に立候補したが、手を挙げたのは、もう1人、昨年もいっしょにやった同級生のO君のお父さんだけだった。一番負担が多いと、みなが敬遠するキャンプ担当だが、私は昨年やって楽しかったし、夏休みのことなので、日程的にも取り組みやすい。ごく自然な選択だった。

 しかし、新学期の父母会で、新担当者の顔合わせをしてみて驚いた。確かに立候補は私たち2人しかいなかったが、残りは父母会の欠席者を少しと、あとは、新1年生の父母ばかりである。とくに、昨年以前にキャンプを経験した先輩たちがみな抜け、経験者は、まだ2年目の私とO氏だけ。必然的に、私とO氏が実行委員長と副委員長という成り行きになったが、父母会のあと、2人で夜道を帰りながら、どうしようと途方に暮れた。

 8月に、秩父の小さなキャンプ村で行う、1泊2日のキャンプである。簡素なバンガローに宿泊し、川遊びを楽しむ。薪を燃やして飯を炊き、カレーを煮る。キャンプファイアーと肝試しで盛り上がり、翌日の朝食、昼食まで、協力し合って手作りの生活を楽しむ。

 昨年は、地元の木工所の2代目で、地域活動の「顔」ともいうべき、W氏が実行委員長だった。地域に根ざした自営業の機動力を生かして、物と人を動員し、トラックにさまざまな備品を積み込んで、マイカーを連ねて繰り出す。大人数の食事を仕切る仕事やレクリエーションにしても、人材がそろっていた。思い出せば思い出すほど、自分たちにあれはできない、とうてい無理だと頭を抱えた。

 父母たちにアンケートを実施し、その結果を元に次の実行委員会をという段取りだったので、O氏と2人で相談して、今年のキャンプは日帰りバーベキューのような趣向でどうかという提案を込めたアンケートを作成した。それを見たベテラン指導員のK先生(女性)は、私に宿泊の意義を諄々と説いた。私もそれは認めるし、やる気もあるが、あまりに厳しい状況の中で、無理して実施しても、失敗に終わる可能性が高く、自分の生活も犠牲になる。それよりも、今年は縮小しても、来年の宿泊キャンプ実施に向けた体制作りをしたい、そのための日帰り案だと、私は反論した。

 アンケートの結果は、宿泊でも日帰りでも参加希望人数に大差はなかったが、実行委員への同情から、日帰り案もやむなしとの意見が多かった。私はそれを元に、日帰りキャンプの案を作成した。各担当の自立性を高め、仕事を分散させた。特定個人の能力に依存しすぎずに、誰が実行委員になっても実施できるような組織作りを目指した。

 O氏にも了解をとって、実行委員会に提案することにした。すでに、6月も半ばに差しかかり、実施までには1月半しかなかった。

2002.8.

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