心を癒す炎(定時制高校の文化祭①)
11月中旬に、K高校定時制の文化祭 があった。日曜の午後半日で、各クラスが模擬店などを行なう。例年、校外の友人や近所の人、OBなどが集うので、規模が小さいわりにはほどほどのにぎわいである。
しかし、統廃合計画によってK高校定時制は今年度から募集停止となり、1年生がいない。規模が縮小し、盛り上がりに欠けるのではないかと心配されていた。
それだけに、今年の生徒会役員たちは、「これが最後の文化祭になるかもしれない」との思いで、熱心に取り組んだ。メインテーマを「終わりよければすべてよし」とぶち上げ、初の試みである後夜祭の企画を練り上げた。
例年なら、生徒は後かたづけをして、4時には帰ってしまう。それを、日没にかけてキャンプファイアーをやろうというのだ。参加は強制できないから、生徒が何人集まるか、生徒会役員たちも半信半疑だった。
しかし、ふたを開けてみると、黄昏の校庭に、三々五々集まった生徒たちは、全校生徒一〇〇余名中、50名は優に超えていた。もともと欠席者が多いことを考えると、これは、驚異的な人数である。校庭の一角を広く使ってのクイズ。やがてキャンプファイアーを囲んでの歌。PTAのお母さんたちによる豚汁のサービス。そして、最後は花火。
炎は夜空に向けてごうごうと燃えあがり、ぱちぱちと薪がはぜる。熱は頬を火照らせる。オレンジ色の光に浮かび上がった生徒たちの表情はみな、実に和やかで、楽しげだった。
その日のわがクラスの企画は、実はあまり後味がよくなかった。生徒の1人が校外でリーダーを務めるロックバンドを招いてのライブハウス。客の入りはまずまずで、評判は悪くなかったが、そのあと、クラスの生徒たちが黙々とあとかたづけしているそばで、バンドのメンバーたちは、我がもの顔で談笑している。私はよっぽど注意しようと思ったが、しょせんは他人のふんどしで相撲をとるようなことをした自分の責任だなあと痛感したので、あえて黙っていた。しかし、生徒たちに不満がたまっているのはじゅうじゅう感じていた。あとかたづけが終わった後に、私は彼らを周りに集めて労をねぎらい、申しわけないと謝った。
そんな後味の悪さを残してクラス企画を終えたうちのクラスの生徒たちだったが、後夜祭が終わる頃には、晴れ晴れとした顔で、「これですっかり気分が治った。後夜祭に出てほんとうによかった」と口をそろえて言った。
まさに、「終わりよければすべてよし」。私は、こんなすてきな後夜祭を企画し、実現してくれた生徒会役員の生徒たちの努力に、心の底から、深い感謝を感じた。
2000.12.